ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

私説 ミジンコ大全  

私説 ミジンコ大全
坂田 明

私説 ミジンコ大全私説 ミジンコ大全
(2013/01/17)
坂田 明

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ミュージシャンの坂田明氏がミジンコを好きなことは聞いていたが、
その氏による、ミジンコ本である。

最初の「ミジンコ入門」は、「ミジンコ道楽」(1997)を底本として、
改稿したもの。
坂田氏独特の語り口でミジンコに対する愛が語られ、なかなか楽しめる。

「ミジンコ」図鑑では、坂田氏が撮影した各種ミジンコの写真が掲載される。
掲載種は以下のとおり。
こんなマニアックな生物の写真は、他で見るのはなかなか苦労しそうである。
カブトミジンコ
ミジンコ
タイリクミジンコ
エゾハリナガミジンコ
オオミジンコ
オカメミジンコ
ニセネコミジンコ
スカシタマミジンコ
オナガミジンコ
ナガマルミジンコ
カブトエビ
ホウネンエビ
ミスジヒメカイエビ
ケンミジンコの仲間
ヤマヒゲナガミジンコ
ヒゲナガミジンコの仲間
ソコミジンコ
ヒョウガソコミジンコ
カイミジンコ

以下の章は対談だが、ちょっと坂田氏が聞き手にまわりすぎており、
新しい知見はいくつか知ることができるものの、第1章のような楽しさには欠ける。

なお、本書には坂田明のCD「海」が同梱されている。
収録曲は8曲。

これでこのお値段。坂田明ファンであれば、お買い得な一冊である。


【目次】
ミジンコ入門
ミジンコ図鑑
ミジンコと地球環境(対談:花里孝幸)
ミジンコ研究、今昔(対談:遠部卓)
ミジンコのDNA(対談:山形秀夫)
あとがき

【メモ】
p18
浮遊生物:プランクトン
遊泳生物:ネクトン
底生生物:ベントス

p110
海外の論文で、湖沼地帯の丘の上にプランクトンネットをしかけ、
それを水につけたらミジンコが出てきたというものがある。
ミジンコの休眠卵(耐久卵)は、乾燥して土埃と一緒に飛んでいるものがあるらしい。

p112
ゾウミジンコ:35年前の地層から出た耐久卵が孵化した事例がある
ケンミジンコ:400年前(ネイチャーか何かに載っていた)

ベルギーの研究者:
湖底の泥を柱上に抽出、10cm単位でミジンコの耐久卵を孵化、
20cmと30cmで性質に違い、遺伝子変異が起きている

p132
マガキの幼生:生後2週間はプランクトン生活、その後付着するが、
競争相手にフジツボの幼生がある
フジツボが先につくと、マガキはつけない
よって毎日プランクトンネットを引き、
カキの幼生が増えてフジツボが減った時に採苗した(実習)

p142
海産のミジンコの種数が少ない
そもそも海産のミジンコは、陸のミジンコが二次的に海に戻ったもの

また、ミジンコは通常単為生殖(生存に厳しい状況だと両性生殖)なので、
遺伝子変異の機会が海では少なく(干上がるとかの環境変化がないため?)、
種分化が進んでいないのではないか

p155
船舶のバラスト水でミジンコが運ばれる可能性がある

一方、ウスカワミジンコが北海に進出して定着した事例があるが、
これは温暖化の影響で表面水温が上昇したため、
通常は熱帯や温帯に分布する種が進出できたのではないか

p176
人間のヘモグロビン:
酸素分子1個を結合するポリペプチド(アミノ酸が連結されて生じる物質)が4本集まった構造

ミジンコのヘモグロビン:
酸素分子1個を結合するポリペプチドが直列に2本つながったポリペプチドが、さらに
12本や16本集まった構造。

→人間の6~8倍の酸素分子を、タンパク質1個あたり結合できる。

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category: 甲殻類

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ミジンコはすごい! (岩波ジュニア新書)  

ミジンコはすごい!
花里 孝幸
【ミジンコだけなら良かったのに。オススメしない度】★★★★

ミジンコはすごい! (岩波ジュニア新書)ミジンコはすごい! (岩波ジュニア新書)
(2006/04/20)
花里 孝幸

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ミジンコなんて全く興味がなかったが、ここしばらくマイナーな生物の本を読んでいたので、
このあたりで読んでおこうと思った。
いくつか新しい発見があったのは収穫である。
まずミジンコが「微塵子」であること。言われてみれば当たり前だが、「みじん」という日本語由来の生物名とは思ってなかった。

次に、学生時代の教科書では横から見た図ばかりで、それにはかわいい目が描いてあったのだが、
実は単眼であること。正面から見るとサイクロプスである。一方向からの図だけ見て、わかったつもりでいた。
反省。

もう1点は、世界で500種程度ということ。
これだけ小さいサイズであり、移動能力もさほどないので、もっと分化が進んでいそうな気がするのだが。これでは日本で記録された鳥類よりも少ないではないか。
なぜこれほど種分化が少ないのかが知りたいところだが、その点についての言及はなかった。
もしかすると著者が推測しているように、野鳥が広範囲に分散させ、種分化しないのかもしれない。
ただ著者は糞での分散を考えているが、糞だとそれほど広範囲には分散しない。
僕としては、カモ類の脚、羽毛の間、嘴の表面などに耐久卵が付着するのではないかと考える。

とまあ以上のように、
日常では全くかかわりのない生物についていろいろ新知見を与えてくれるので、わりと楽しめる。


しかしある箇所で、全くもって筆者のスタンスに納得がいかないので明記しておく。
(本ブログで紹介する以上、僕が同意していない、という点は明確にしておきたい。)


本書後半、小魚がミジンコを食うことでミジンコの構成種や個体数が変化する、という流れで、
筆者はブラックバス問題に触れている。

*p125
「『(ブラックバスによって)湖に魚がいなくなることが生態系の破壊』ということを考えてみましょう」「湖から魚がいなくなっても、『植物プランクトン→ミジンコ→捕食者(無脊椎捕食者)』といった食物連鎖がつくられ、これに分解者であるバクテリアが加わって、きちんと物質が循環する生態系が成立するのです。したがって、『ブラックバスが生態系を壊す』という言い方はおかしなものであり、『生態系を変える』という表現が正しいと私は考えます。」

*p126
「ところで、ブラックバスが生態系を壊すという言い方は、この魚は湖の生物にとっては悪者である、という意識から生まれているように思われます。はたして湖の生物たちはブラックバスを悪者としているのでしょうか。」
「湖のなかには、ブラックバスの侵入を歓迎する生き物とそうでない生き物がいるのです。」

僕としては、こう読んだ。
①ブラックバスは生態系を壊すといわれるが、生産者→消費者→分解者というサイクルは維持される。だから生態系を「壊す」というのは誤りで、「変える」が正しい。

②ブラックバスは悪者だ、とされる。確かに食われる小魚にとっては悪者である。しかしその小魚の捕食圧にさらされていたミジンコにとっては善である(だから悪者ではない、少なくとも善でも悪でもない、という結論は明記されていないが、そういう趣旨であろう。)

これに反論する。
まず①について。

生態系という言葉には、単に生産者→消費者→分解者という役割による物質循環サイクルを示す概念としての生態系のほか、特定の環境・歴史をふまえて特定の種によって構成される、ある土地特有の在来生態系として使われるときがある。
そしてブラックバスをはじめ外来種の侵入については、当然在来生態系が損なわれることが問題とされている。常識的に、誰がブラックバスが侵入したらシステムとしての生態系が崩壊し、生産者も分解者も消滅して死の水域になる、と主張しているだろうか。
よって、「ブラックバスは(在来) 生態系を壊す」という主張は、通常「(在来)」という文言が前提にある。
ところが著者は、「ブラックパスは(システム概念としての)生態系を変える」だけだ、だから「壊す」という言葉遣いは誤っている、と主張している。これは一種の詭弁である。

特にひっかかるのは、「ブラックバスは生態系を壊す」という文章は具体的な出典があるわけでないことである。「在来生態系」という言葉をここで使うと、このロジックがそもそも成立しない(筆者は別の場所では在来生態系という言葉を使っているので、ここでの不使用は故意であろう)。
よって、このロジックを展開するために、あえて「生態系」という言葉を用いたと考えられる。
これは著者による意図的なミスデイレクションである。

次に②について。
ブラックバスが他の特定の生物種にとって善か悪か。そんなのは食物連鎖や生息域等、生態的な関係によるのだから、想定される生物種によって異なって当然である。
この文章も通常、「ブラックバスは(在来生態系の価値を重視する者にとっては、または在来生態系そのものにとっては)悪である」という文意で使われている。
善悪という価値の確定には、必ず価値判断する主体が存在するものであり、ブラックバスは悪だ、と価値判断する主体は、どんなに譲歩しても少なくとも人間であるからだ。
一般論としてブラックバス問題を語るときに、被食者である魚の立場から「悪だ」と主張するような人間はいまい。

しかし著者は、「ブラックバスは(ある生物種Bにとっては)悪である」という文意、すなわち価値判断の主体は人間以外の特定生物だろう、と一方的に決め、その上で「しかし生物種Cにとっては善である」、と主張し、だから善悪は決められない、と感じることを求めている。
価値判断の主体を著者のように決めれば、こういう結論になってあたりまえである。

もちろんブラックバス問題については、様々な立場と考えがある。
しかしその議論はフェアかつ科学的であるべきであり、語句定義という、問題の本質と全く違うところで世論を誘導するものであってはならない。こういう行為を我田引水という。
特に筆者のように湖沼の生態系において重要な役割があるミジンコの研究者であれば、
その主張は科学的見地に立つものと受け入れられると容易に想像できるだろう。
だからこそ、科学者としての説明責任があり、語句定義を利用した意図的なミスデイレクションなどすべきではない。

何よりも僕が問題と思うのは、本書が「岩波ジュニア新書」という青少年を読者に想定したシリーズであり、かつミジンコに特化したタイトル・内容の中であることだ。
読者はミジンコについての客観的事実を説明する中で、著者の個人的主張を、
あたかも科学的な装いのもとで読むことになる。

こういう姿勢を、僕は姑息と定義する。
著者は「自然はそんなにヤワじゃない」というタイトルの著書もあるようだが、
これも在来生態系という特殊事情を、概念としての生態系にすりかえて議論しているのではないかと疑われる。
気持ちよくないので、今後僕は他の著書は読まないことにした。

【目次】
Ⅰ ミジンコに注目
Ⅱ ミジンコの正体
Ⅲ 魚VSミジンコ
Ⅳ 湖の水環境を考える
Ⅴ 水槽で「湖」の生態系を見る
Ⅵ 湖から地球環境を考える

【メモ】
pⅲ
ミジンコ=「微塵子」

p2-
フサカ=ハエ目の昆虫、成虫は蚊に似る、幼虫は透明で水中を漂い、動物プランクトンを捕食
ダフニア・ピュレックス(ミジンコ):体長3mmほど

フサカのにおいに反応し、頭が尖る
反応するのは母親の育房に産み出された卵の時期~胚の時期
生まれたときから頭が尖っている
しかし、3-4齢になり1.3mmを超える頃には、フサカのにおいがあっても頭の尖りがなくなる
=フサカ幼虫が捕食するのは1.3mmまで

p22
ミジンコの採餌
胸の殻の中に濾過脚毛があり、これで餌を漉しとる

p26
湖で春の一時期のみ透明度があがる「春の透明期」という現象
春になる
→低温に適応している植物プランクトンの珪藻類が繁殖
→水の透明度を下げる(珪藻類は茶色なので、茶色く濁る)
→ミジンコ(特にダフニア)が増殖し、珪藻類を捕食
→透明度があがる
→餌がなくなり、ダフニアが減少
→植物プランクトンの増加
→再び濁る
これによって、2~3週間だけ透明度があがる

p30
植物ブランクトン生態学者にとってバイブル的論文
(米:ブルックス&ドッドソン)
湖をしらべると、次の2型に分かれた
A・ダフニアを中心とする大型ミジンコが優占している湖
B・ダフニアが少なく小型のゾウミジンコが多い湖 

アレワイフというニシン科の魚がBの湖にはいて、大型のミジンコを捕食した

p34
ミジンコ:20℃の水温:生後数日で成熟して卵を産む。卵は2日くらいで母親の育房から出る。
親個体は2日に1回産卵する。よって十分な餌があれば、3日で個体数は倍になる。

p50
ミジンコは眼は一つ、複眼構造。光を感じるらしい。なぜこんなに大きいかは不明。

p62
酸素濃度が低い水でのミジンコ:ヘモグロビンを作り、水中から効率よく酸素を取り込む。
(見た目が赤く見える。)
この能力があるのはオオミジンコ、ダフニア・ピュレックス、オカメミジンコ、タマミジンコなど、ほとんどが大型種。

p63
北米や北欧の極地域のダフニア・ピュレックスは黒い
=メラミン色素、紫外線耐性を獲得している

p65
ミジンコは通常メスしかいない:単為生殖
寿命:23℃で1ヶ月程度、1回の産卵数は最大約40個、一生に産むのは400個に達する。
温度が下がると寿命が延びるが成長速度が落ちる
10℃=180日生存

p71
冬が近づき環境が悪化すると、雄に発育する卵を産む
雄が増えると、雌は黒い鞘に包まれた卵を産む。
(黒い卵は減数分裂したもの:半数性)
そして雄と交尾し、受精することで受精卵となる
(ダフニアの仲間は黒い鞘の中に様後は2個)
この卵は固定に沈む(表面張力によって浮くものもある)
すぐに孵化せず、冬の寒さに耐えて翌春雌が発生する
=「休眠卵」、「耐性卵」

耐性卵を産むのは長日→短日の変化、ミジンコの密度増

深いところに沈んだ耐性卵は、水温が上昇しないので孵化しない。
翌春に孵化するのは浅い場所のもののみ

ただし耐性卵は、35年前の地層から得たものでも孵化したことがある


p89
ミジンコ:全世界で約500種
マルミジンコの仲間:約170種=水草帯に生息しているため、多様化が進んでいる

p109
ミジンコ=枝角目(ミジンコ目)
近い仲間:
無甲目(ホウネンエビ目)、背甲目(カブトエビ目)、貝甲目(カイエビ目)
ミジンコは約2億年前に、カイエビの祖先から枝分かれしたと考えられている

p112
ホウネンエビ、カブトエビ、カイエビは全て雌雄があり、産む卵は全て耐性卵
=これらは水田や融雪プール(北海道のキタホウネンエビなど)など、一時的な水たまりに限られている
=魚が生息できない場所
=大型である

もともとは海や汽水域にもいたが、中生代中期(約2億5000万~6500万年前)には、現在と
同様な場所にのみ生息
=魚が進化して生息域を拡大した時期に一致

p118
ダフニアなど大型のミジンコがヘモグロビン生成能力を獲得した理由
=酸素濃度が低く、魚が生息できない場所でも生息するため

*p125
「『(ブラックバスによって)湖に魚がいなくなることが生態系の破壊』ということを考えてみましょう」
「湖から魚がいなくなっても、『植物プランクトン→ミジンコ→捕食者(無脊椎捕食者)』といった食物連鎖がつくられ、これに分解者であるバクテリアかせ加わって、きちんと物質が循環する生態系が成立するのです。したがって、『ブラックバスが生態系を壊す』という言い方はおかしなものであり、『生態系を変える』という表現が正しいと私は考えます。」

*p126
「ところで、ブラックバスが生態系を壊すという言い方は、この魚は湖の生物にとっては悪者である、という意識から生まれているように思われます。はたして湖の生物たちはブラックバスを悪者としているのでしょうか。」
「湖のなかには、ブラックバスの侵入を歓迎する生き物とそうでない生き物がいるのです。」

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