ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

人類の悲劇を見に行く旅。「ダークツーリズム入門 日本と世界の「負の遺産」を巡礼する旅」  

ダークツーリズム入門 日本と世界の「負の遺産」を巡礼する旅
風来堂



正直なところ、「◯◯ツーリズム」という言葉は好きではない。

ある一定層の興味関心を、実際は多彩な観点が有るのに
安易に「◯◯ツーリズム」とまとめたり、
逆に「◯◯」というテーマに対する旅行ニーズの有無も不明確なのに、
「◯◯ツーリズム」として町・村起こしの手段として提起されるなど、
どうも言葉と実態が乖離している感があるためだ。

このダークツーリズムという言葉もそういう雰囲気を漂わせているが、
どうも数年前から欧州あたりで流行りだしているらしい。

負の遺産を見る旅と言ったら分かりやすが、
実は「負の遺産」という言葉は日本独自のものと本書で指摘されている。
(なのにタイトルに用いるところが、ちょっと解せないが。)
だからダークツーリズムを定義するなら、
「戦争や災害をはじめとする悲劇の記憶を辿る旅」(本書p17、井出明教授)ということである。

旅の目的地は広島の原爆ドームやアウシュビッツ収容所跡等。
そう言われれば「真面目な動機」なのだなと分かるが、
そうしスポットに特化した旅である。

いわゆる怖いもの見たさや興味本位の「廃墟めぐり」「事件現場めぐり」とは全く違うが、
それらとは違う旅なのだと主張するにも、
「ダークツーリズム」という言葉は今後よく使われるのではないだろうか。

本書は、大きく日本、欧米、アジアに分け、全81カ所を紹介する。
1か所につき5~6p。
世界各地に跨るためか書き手は様々であり、レポートする視点、感じ方もバラバラである。
(編著が風来堂という編集プロダクションであり、
こういうテーマでの企画がまず在り、そこから原稿を集約していったのだろう。)

よって、いろいろなスポットを紹介するという体裁は整っているものの、
テーマがテーマなだけに、
個々の紹介では個人的な視点が強調されるという、ちょっと中途半端な本にも感じる。
例えば地域で分類しているのは旅行ガイド的視点。
でも、戦争関係と事件関係、政治的紛争地を並列で並べられると、やっぱり興味本位の感が強くなる。

このあたり、どう整理していくかは今後の課題だろう。

とはいえ、
一度は聞いたことがあるスポットにしても、実際に足を運んだ人のレポートを読むと、全く印象が異なる。
またこれだけの量になると、知らなかったスポットも多数掲載されている。
特に戦争関係や虐殺関係となると、「知らなかった」ではすまされない重みがある。
「ダークツーリズム入門」というタイトルはともかくとして、
読んでおいて損は無い一冊である。


【目次】
・井出明さん(追手門学院大学教授)インタビュー
・Part1 日本篇
・Part2 欧米篇
・角田光代さん(作家)インタビュー
・Part3 アジア・アフリカ篇
・下川裕治さん(旅行作家)インタビュー
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気軽な机上の旅を味わおう。「斑猫の宿」  

斑猫の宿
奥本 大三郎



フランス文学者にして虫屋の奥本氏のエッセイ。
タイトルは「斑猫の宿」、斑猫ってハンミョウという虫なので、本書も昆虫主眼の旅エッセイかなと思って読んでいたが、思いのほか虫テーマは少ない。
その代わり、土地の名所・旧跡を訪れることも多々あって、
何だか勝手が違うなと思っていたら、
本書は雑誌「旅」の連載をまとめたもの。「旅」そのものがテーマだったのである。

連載期間は平成10年6月から平成12年4月まで。旅の時期はもう少し早くからと思われるので、
今から20年くらい前である。長良川河口堰問題を始め、日本全国での乱開発が盛んに問われ、
少しずつ方向性が変わってきた(反対運動の成果もあるし、景気の悪化のせいもある)時期だから、
「無駄な開発ばかりする行政と土建屋」に対する苦言が随所にある。
それはそうなんだろうけど、ちょっと主張が重なり過ぎる感もある。

著者自身もあとがきで書いているが、こうして全国津々浦々を鉄道と自動車だけで気軽に旅行できるのも、
数多の開発の成果ではある。

その現状は今も変わらず、
自然保護、開発反対が言われる一方で、荒れ果てて放棄されつつある山間部の維持や、
ますます頻繁になってきた気象災害の防災工事・災害復旧工事なども重要になってきていて、
開発と保護のバランスはやはり難しい。

そうした思いは有るものの、それでも本書に掲載されているとおり、
わずかに遺された聖域、奇跡的に残った虫、それを追う同行の士との語らいなどは、
しみじみと楽しいものである。

北海道、有澤浩氏(鳥屋にはクマゲラの、という方が分かりやすい)と探すオオイチモンジ。
四国、四万十トンボ自然公園。
長野県での地蜂探し。
岐阜のギフチョウ。
フランス・コルシカ島でのファーブルゆかりの木探し。

昆虫と、昆虫好き人々との邂逅によって得られた、
一期一会の体験が、この一冊に残されている。

20年前の紀行エッセイではあるけれど、
こうした視線の旅は中々少ない。
昆虫という著者の軸に関係なく、ちょっと変わった旅を楽しめる一冊である。


【目次】
第1章 西表・波照間の巻―電信柱のカンムリワシ
第2章 小千谷の巻―いざり機とルーズソックス
第3章 富良野・大雪の巻―高貴な蝶は悪食家
第4章 四万十・足摺の巻―叛逆者とトンボの楽園
第5章 白馬・戸隠の巻―利権おいしかの山
第6章 泉州・南紀の巻―微小な生命と神々の国
第7章 岐阜の巻―束の間の蝶、超大粒の山椒魚
第8章 横浜・東京の巻―珍獣奇鳥怪魚は街に棲む
第9章 宮城の巻―ほたるの宴 窓の雨
第10章 長州の巻―防人の島と斑猫の宿
第11章 仏蘭西の巻―コルシカの栗の樹の下で
第12章 日向の巻―石垣と孤高の外交官
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それはこんなカタチである。「ウはウミウシのウ―シュノーケル偏愛旅行記 (白水uブックス)」  

ウはウミウシのウ―シュノーケル偏愛旅行記 (白水uブックス)
宮田 珠己



僕はウミウシが好きである。
20歳前半の頃、坂出市沙弥島でアオウミウシやらシラヒメウミウシを見て、
そのカラフルさと可愛さにやられたのである。

アオウミウシってカラフルすぎて一瞬びびるけど、
実際は小さくて、グロテスクさのカケラもない。

この素晴らしさを家族に見せたいと数年通ったが、未だ果たせないでいる。
海水温の上昇で海藻が減ったせいかと思うのだが、残念である。まだ諦めていないが。

で、本書著者はウミウシをはじめとした「変なカタチ」の生きものをシュノーケリングで見るべく、
国内外(ほとんどは海外)のスポットを彷徨うのである。

バリカサグ島。パンダラオ島。アポ島。スミロン島。ビヤドゥ島。ピーピー島。
どこだそれ。

フィリピンやインドネシアやバリらしいが、それが「どこか」なんてどうでも良い。
とにかく著者は「変なカタチ」の生きものを見たいのである。

ダイバーに囲まれ、肩身が狭い思いをする。
頑張って到達したら、サンゴが死滅している。
実はあんまり泳げない。

それでもあっちのビーチ、こっちの湾と、
なんだか不思議な行動力でシュノーケルを続けるのである。

本書はその旅行記なんだが、役に立ち度はゼロであろう。

しかし、「自分が見たいものを見に行く旅」なんて贅沢の極みだし、
前記のとおり、絶対に僕には縁が無いような場所ばかり。

そこでの旅を、気楽に追体験できるのが本書である。

随所に著者が見た「変なカタチ」の生きもののイラストもあるが、
イラストというかラクガキである。でも、これも可愛い。
マンジュウヒトデがひっくり返るだけで2p分。
著者が楽しんでいることが嫌と言う程伝わってくるのだ。

なぜか、海外のマニアックな文学作品に強いイメージが有る白水uブックスからの刊行。

たぶん本書に出会う人は少ないと思うけど、
もし見つけたらぜひ気楽に楽しんでいただきたい。
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「自分の旅」を楽しむヒント。「ニッポン旅みやげ」  

ニッポン旅みやげ
池内紀



著者はドイツ文学者。多くの訳書があるので、知らないうちにお世話になっていることも多いだろう。
だが本書はそうした文学話ではなく、
日本各地の旅の途中、ふと見つけた「話したくなるモノ」を積み上げた一冊。

40章で構成されているが、それはすなわち40の町の物語ということ。
それもガイドブックで語られるような名所旧跡ではなく、
その土地に生きる人々の記憶が刻み込まれたような建物等が紹介される。

視点としては、主に明治以降。

例えば三等郵便局や、「据置郵便貯金碑」。
ある店の床に残された鉤十字。
門構えにつけられた「誉之家」というプレート。
それぞれに、明治から昭和にかけて、日本の歩みが刻み込まれている。

これらを見つけた著者は、人々が何を思い、何を願ったのかに思いを馳せる。
著者と共に旅を楽しむようなつもりで、一日一章読むのもいいだろう。

一応アクセスも記載されているが、多く取り上げられているのは、小さな商店。
本書を手に訪ねるような人も少ないだろう。
むしろ本書を参考に、自身の旅を充実させていきたい。

それにしても、香川が無かったのが残念。
下記のうちに、ご自身の町があれば、ぜひ。

北海道・札幌市/宮城県・蔵王町平沢/神奈川県・横浜市/埼玉県・秩父市/長野県・軽井沢町
愛知県・有松/石川県・金沢市/京都府・中書島/兵庫県・福崎町/愛媛県・西条市/宮城県・石巻市
栃木県・黒磯/群馬県・桐生市/東京都・八王子市恩方/山梨県・長坂/新潟県・浦佐/奈良県・奈良市中
兵庫県・高砂市/山口県・下関市/鹿児島県・指宿/宮城県・白石市/茨城県・結城市/東京都・浅草・鷲神社
静岡県・静岡市丸子/山梨県・富士吉田市/愛知県・豊橋市/長野県・駒ヶ根市/滋賀県・水口町/三重県・関
北海道・名寄市/福島県・柳津/群馬県・川原湯/東京都・旧品川宿/山梨県・河口湖/長野県・須坂
新潟県・塩沢町/兵庫県・神戸市/鳥取県・若桜町/福岡県・香春町

【目次】
1 影法師たち
2 三等郵便局
3 祭礼指南
4 値切り方
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夢を叶えることは、可能だ! 「ニッポン超越マニア大全」  

ニッポン超越マニア大全 (文庫ぎんが堂)
北尾トロ



趣味は何ですか? (角川文庫)」(レビューはこちら)でも書いたが、他人の趣味は変な趣味に見えがちである。これは、個人の視点だ。

一方、社会全体からすれば、多くが好む趣味が「正しい趣味」であり、愛好者が少数しかいない趣味は「変な趣味」という位置づけがなされる。

だが本来、「何が楽しいか」など人それぞれ。

現在「良い趣味」と認識されている趣味とは、結局のところ大人数でやる(だから多くの人が嗜む)ことが前提であったり、
商売性が高くマスメディアへの露出が多かったり、影響力の強い地位・立場の人が好む又は実施しているといった、
その趣味自体の性質とは関係の無い事実によって、評価を得ているに過ぎないと考えている。

例えば、かつて「趣味の王道」の一つでもあった切手・コイン収集。
そのスタイルに変化はないが、収集人口が激減している今、
小学生が切手収集に熱を上げていると、「変な趣味」と周囲からは言われるのではないか。
そして、「そんなことより、スポーツしたら?」と言い出す始末。

そもそも、趣味に優劣はない。というか、そんなものを考える必要すらない。

重要なのは、どこまで本人が楽しめるかだ。
そしてその趣味の目標は、どんなに周囲から異質に見えようとも、
「夢」であることには間違いない。

そして本書は、その夢を達成した、または達成しつつある、
羨ましく幸せな人々の物語だ。

もちろんタイトル通りというか、あまり一般的ではない趣味が並ぶ。

ボンネット型消防車や、電話、真空管ラジオのコレクター。
国道標識の撮影。
飛行機、巨大カブトムシロボット、ゴム銃、1/23姫路城の製作。

だが、おそらく本ブログを読んでくれている方々はご存知だろう。

ゴム銃製作は、「ゴム銃大図鑑」(レビューはこちら )に結晶している。

国道標識撮影は、実のところ国道を楽しむ様々な趣味の一形態だ。(「ふしぎな国道 (講談社現代新書)」(レビューはこちら)にも掲載。)

自作飛行機どころか、メーヴェ「ナウシカの飛行具、作ってみた 発想・制作・離陸---- メーヴェが飛ぶまでの10年間」(レビューはこちら)を造っている人もいる。

また、作家森博嗣氏は、自宅を走る5インチゲージの鉄道を創っている(森氏のHPはこちら欠伸軽便鉄道のブログはこちら)。での庭園鉄道

また、巨大カブトムシロボット「KABUTOM」(公式HPはこちら)は、マスコミにも何度も取り上げられている。
変な趣味どころか、とても多くの人に夢と感動を与えている。

本書で取り上げられた多くの人も、博物館などを通じ、
多くの方に楽しみを共有してもらうことを目標とし、達成している。

消防自動車博物館http://keiranbokujo.com/company.html
ティッシュでの昆虫政策 工房心の郷 http://kobo-kokoronosato.com/
バス好きが昂じてバス会社設立 銀河鉄道 http://gintetsu.co.jp/
「特急あずさで旅する夢」がきっかけ 夢ハウス・あずさ http://www.yumehouse.co.jp/

何とも羨ましい姿ばかりだ。

掲載された人々の高みまで到達することは、困難かもしれない。
だが誰でも、好きな趣味を通じて、素晴らしい人生を歩むことが可能だという希望を、
本書はしっかりと伝えてくれる。

本書は「月刊ラジオライフ」誌上で連載していた記事の単行本化で、
タイトルや売りも「変な人」を紹介という気配が濃厚だ。

だが本当は、夢を追い求め、夢を実現しつつある人々のドキュメンタリーだ。
雑事に追われる日々の中で、心の糧として、本書は手元に置いておきたい。


【目次】
【1章】四半世紀は当たり前 かけた年月の厚みに驚く
すべてを鉄道に捧げ、鉄道に愛された永遠の鉄道少年
取りも取ったり、200種類オーバーの資格取得マニア
「ラジオがいた時代」そのものを愛する真空管ラジオコレクター
家族の思い出も運命の恋も、国道標識とともに
"自力"で大空を舞った30年 素晴らしき飛行機野郎

【2章】いったいどこまで集めるの? すさまじきマニアの欲求
実戦派ならぬ「実食派」! 戦闘糧食コレクター
「鉄道無線解析」ってどんな世界なんだ?
動態保存がこだわり! ボンネット型消防車マニア
50歳過ぎて覚醒 電話コレクターの深すぎ人生哲学
BBMカード収集家 休日は全部、サイン収集に捧げてきた

【3章】 誰に何を言われようと決してくじけぬタフなメンタル
4時起きで生活と両立 うまい棒コレクターを支える「責任感」
命を吹き込む魔法の手 ティッシュ昆虫アーティスト
バス降車ボタン蒐集家 これは趣味ではない、「任務」である
永遠の工作少年とともに巨大カブトムシロボは「成長」していく

【4章】マニア魂、人を動かす! その情熱を誰かが見ていた】
イチから戦車を再現した男に、現役軍人も感服!
バス愛爆発! たったひとりでバス会社を作ったバスマニア
夢のお告げで特急あずさを買った男 幸福な正夢は終わらない
ゴム銃作って、協会作ったら、仲間ができた
美しきアキバ案内人 私の居場所は秋葉原"電気街"!

【5章】言葉にできないマニアの極北、すごすぎる到達点】
マニアの道はかくも濃い! 親子2代のマニア道
苦節19年、たったひとりで姫路城を作り上げた男
24時間無線音声を追い続ける「無線受信界の鉄人」
プロ野球ぬりえ画家 自称・ヤクルト選手の奇妙な夢

【文庫版書き下ろし】
なぜ撮り続けるのか、そこに「外蛇口」があるからだ
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