ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

ラスト・ワルツ  

ラスト・ワルツ
柳 広司



久しぶりに読んだフィクション。

第二次世界大戦中、日本に「魔王」と呼ばれる結城中佐は、軍の常識を逸脱するスパイ養成組織「D機関」を創設。
そのD機関のスパイたちが、世界各国で暗躍するエスピオナージュである。
これまで、3冊刊行されており、おり、本書「ラスト・ワルツ」は4冊目となる。
映画化もされて好評のようである(公式HP)。

詳しい内容はネタバレになるので省略。
スパイ小説、冒険小説というと、例えば「深夜プラス1 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 18‐1))」など、やはり海外モノが優勢である(この本、何度読んでも良い)。

しかし、本シリーズのように、日本人が活躍し、ネイティブの日本語で綴られた良質な小説は、娯楽として、やはり楽しい。
まだ未読の方は、本シリーズいう新しい作品世界に出会う楽しみが人生に残っているということである。
連休中、ちょっと時間が空いたら読める、短くてテンポが良い本はないかなあ、と思っている方にお勧め。

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category: 冒険小説

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ミサゴのくる谷  

ミサゴのくる谷
ジル ルイス



ミサゴは、魚食性のワシタカ類だ。
ミサゴ(フリー画像)
(※写真はフリー画像・写真素材集 3.0より。著作者:winnu)

精悍な顔つき。魚を捕る時には水面上でホバリングし、急降下して獲物を掴む。
そのダイナミックな姿は、何度見ても飽きることがない。
僕が住む香川県では、ため池や瀬戸内海といった穏やかな水面が多いためか、わりと高密度に生息している。しかし全国レベルでは、準絶滅危惧種にカテゴライズされる程度の個体数しかいない。
個体数減少の原因としては、餌資源の減少、開発による営巣できる大木や自然崖の減少、生物濃縮による発育・繁殖阻害などの要因があり、簡単に回復することは難しい野鳥だ。

日本では一年中生息する留鳥だが、ヨーロッパ圏ではアフリカへ、カナダ・アメリカでは南アメリカへの渡りを行う。
ハードな渡りは、それ自体が個体数の減少要因ともなりうる。

イギリスとスコットランドでは、1967年には2ペア。そこから保護が成功し、2000年には150ペア、2012年には240ペアとなったが、総個体数1500羽程度であり、未だ珍しい野鳥という。
(出典はLoch of the Lowes Wildlife Blog)

本書は、そのスコットランドが舞台だ。

仲間たちと遊んでいた農園の少年カラムは、川沿いで魚を捕っていた少女アイオアと出会う。
少女の家庭は蔑まれていて、カラムの仲間たちもアイオアを軽蔑する。
だがカラムは、その少女になぜか惹かれ、こっそりと話しかける。
そんなカラムに、アイオアはある「秘密」を打ち明ける。

「この農場に、ミサゴが巣を作っている。」

絶滅しそうなミサゴが、自分の農場に巣を作っている!
カラムはアイオアと共に、アイリスと名付けたそのミサゴを守ろうと決心する。

ところがある夜、一緒にミサゴを見守るはずだったアイオアが、観察用のツリーハウスに来なかった…。


ここまでの粗筋だと、野鳥保護の話か、と思うかもしれない。
もちろんそうした側面はあるものの、あまりその主張はない。
むしろ、少年カラムと少女アイオアの交流、
ミサゴ・アイリスのアフリカへの旅、
そして少年カラムの経験する別れと出会いといった、
1年程度だけど、ものすごく濃密な1年が描かれている。

特筆すべきは、この本が2013年に書かれたということで、
パソコン、Eメール、Google、
そして送信機をミサゴに装着して渡りをリアルタイムに衛星追跡するといった、
最新のテクノロジーが見事に盛り込まれていることだ。

お読みいただければ納得できると思うが、衛星追跡という手法がなければ、
この物語は成立しない。

かといって、テクノロジーが前面に出るわけでもなく、あくまで主役は、少年・少女たちの心。
21世紀になって書かれた、21世紀らしい児童文学の傑作と思う。

ぜひ、大人の皆さんもお読みいただきたい。
最後の場面は、とても切なくて、嬉しい。
(決して解説から読まないでください。)

なお日本でも、ワシタカ類のハチクマを衛星追跡したプロジェクトが実施されたことがある。
現在はもう終了しているが、その追跡結果を見ることができる。
このプロジェクト中、僕もハチクマがどう渡るか、ワクワクして見ていたことを思い出した。

ハチクマプロジェクト2012 
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category: 小説

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そばかすの少年  

そばかすの少年
ジーン ストラトン・ポーター


 自分の本名も知らない、片手を失った孤児の少年「そばかす」。
働き口にを探しに辿り着いたグランドラピッズ木材会社で、彼は原生林の「リンバロストの森」の番人として雇われる。
 木材会社の支配人マクリーン氏、そばかすの下宿先のダンカンとサラたちは、
そばかすの誠実さに惹かれ、彼を優しく見守っていく。
 一方、木材泥棒のブラック・ジャックは、リンバロストの森の木を伐採し、密売しようとたくらんでいる。
 そばかすはリンバロストの森を守ることを使命として、忠実に職務をこなしていくが、
その中で様々な生き物の素晴らしさを知る。
 そして、野鳥写真家バードレディと、一緒についてきていた少女エンジェルとの出会い、
孤独な少年だったそばかすは、いつしか尊敬する人、愛する人のために生きるようになっていく。


本書はリンバロストの森を舞台とした、そばかすの冒険と成長、そしてひたむきな愛の物語だ。
僕はこの本を全く知らなかったが、妻は「あの有名な『そばかすの少年』?」と気が付いた。
ジュブナイルとしては、広く知られている名作とのこと。

読後、確かにその評価が正しいと感じた。

この本に描かれた話は、現代からすればおとぎ話のようだ。しかしそのおとぎ話は、
現代に生きる僕らが忘れつつある、しかし決して忘れてはいけない生き方を教えてくれる。

僕は一日2章ずつ読んだが、それくらいのペースがより楽しめるのではないだろうか。
リンバロストの森を想像しながら、じっくり読みたい一冊だ。
なお、この版の解説では結末が紹介されているので、最初から読むことをお勧めする。

ところで結末もさることながら、この本で特に僕が感動したシーンがある。

そばかすは、美しいオオミズアオという蛾(そばかすは名前を知らない)の羽化に出会った時、思わず嘆く。

「これが何なのか、僕は知らない! ああ、知りたいなあ! 知りたくてたまらないよ!
 何か素晴らしいものに違いない!」


またそばかすが別種だと思っていた青い鳥と茶色の鳥が、
じつは同種の雄雌であることに気づき、その名前などを詳しく知りたいと心から思う。

なるほど、これで決まりだ。青い鳥と茶色い鳥はつがいなのだ。
 またしてもそばかすは、「ああ、知りたいなあ」
とつぶやいていた。


そしてカエルの「ミツ・ケロ! ミツ・ケロ!」という鳴き声に促され、
そばかすは生まれて初めて自分のために本-図鑑を買い、自分で名前を調べることを決意する。

「僕はなんてばかだったんだろう! それだよ、僕がやるべきなのは! 教えてくれる人がいなくても、
自分でできるさ! なんのために人間に生まれてきたんだよ?」
「僕は、鳥と樹木と花と蝶のすべてがわかる本を買うぞ! それから…ああ、そうだ、カエルの本も一冊手に入れよう。それですっからかんになってもいいさ」


そしてそばかすは念願の図鑑を手に入れる。初めて図鑑をめくる時には、指が震えてしまうのだ。

この、世界に様々な「知らない」生き物がいるという驚き。
名前を知りたいという欲求。
そして「図鑑」は、それを教えてくれるんだという期待と喜びは、
多くのフィールドワーカー、ナチュラリストが、最初に抱いたことがあると思う。

僕は今野鳥がメインだが、家にはトンボ、クモ、蝶、コケ、貝、樹木と様々な図鑑がある。
どれもこれも、「ああ、知りたいなあ!」と思って、買い集めたものだ。
これらの図鑑が手に入った時のワクワク感は忘れられない。

そして、今でも初めて出会った生き物の名前が分かったときには、
「わかった!!」という感動が溢れてくる。

こうした感動を見事に描いているのは、やはり作者のポーターの実体験があるからだろう。
フィールド描写、生き物との出会いと感動。
本書は、類まれなナチュラリストの物語でもあるのだ。
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category: 冒険小説

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飛ぶ教室 (講談社文庫)  

飛ぶ教室 (講談社文庫)
エーリッヒ ケストナー


「まえがき その一」で書かれているとおり、これはクリスマスの物語だ。
クリスマスまでに起きる、いくつかの事件と、そして奇跡。
その奇跡は偶然ではないということは、本書を読めば実感できるだろう。

登場するのは、ケンカに強いマチアス。優しくて、賢いマルチン。
気弱なウリー、両親に捨てられたジョーニー、読書家のセバスチャン。
彼らがクリスマスに演じる舞台、「飛ぶ教室」の練習を行い、そしてクリスマスを迎えるまでのほんの数日間の間に、様々な事件が起こる。
その事件に、彼らは誇りと信念と優しさをもって、正直に立ち向かう。

寄宿舎舎監の「正義先生」、そして廃車となった電車に住んでいる「禁煙さん」は、
彼らを見守り、導いていく。
子どもたちを、
純粋さと、悩み、葛藤、悲しみ、そして誇りをもった人間として認めたうえでだ。
それが、子どもたちと大人との、本当の信頼となっている。


「子どもたちは、いつも楽しくて、幸福なものだ。」
著者ケストナーは、それをきっぱり否定する。
そんなのは幻想に過ぎない。子どもたちには子どもたちなりの不幸があり、悲しみもある、と。
それは諦観なんかじゃなく、
「子どもは、大人になる前の未熟な段階ではない」と認めることだ。

だからこそ、禁煙さんは、「いちばんたいせつなこと」として、
「きみたちの子どものころをわすれるな!」と話すのだろう。

舞台は、1930年代前半のドイツの寄宿学校。
ケストナーが本書を執筆した当時、ドイツはナチスの支配下にあった。
そのため、本書に描かれる世界や雰囲気が、ちょっと馴染み薄いかもしれない。
また、訳文もとても素晴らしくて綺麗な文章なのだが、
どうしても今となっては少し古い感じを受けるかもしれない。

それでも本書が長く読み継がれてきたのは、
やはり「いかに生きることが大事か」ということを、
やさしく、強く示しているからだろう。

僕がそうであったように、まだ読んでいないまま大人になった人も、
遅くはない。ぜひ一度読んでほしい。
自分の子供時代に思いを馳せることは、決して無駄ではないと思う。

------追記------------------------------
本書をじっくり読むために、積読を終わらせて、
何もストックがない(他の本を読みたくならない)状態で手を付けました。
期待通り、久しぶりに、落ち着いた良い読書ができました。
本書紹介していただいた「北浦和コーヒーハウス」さんに感謝。
本書は、「いつか読みたいときのために」と、子どもたちに渡すつもりです。
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category: 小説

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神々の山嶺  

神々の山嶺
夢枕獏・谷口ジロー




原作は夢枕獏の小説である。
刊行当時、「山岳冒険小説の傑作」と、かなり騒がれたような記憶がある。

いつか読みたいと思っていたが、どうも夢枕氏の文体があわないので、
見送っていた。

そんな中見つけたのが、この谷口ジロー氏によるコミックである。
後書等を読むと、夢枕獏氏もコミックにするならこの人、と決めていたようで、
おそらく原作者のイメージに近しいコミックとなっているだろう。
原作とコミックが乖離しているものが多い中で、これは安心できる、と入手。

実際、まるで映画のようなダイナミックな映像は、本書の内容に極めてマッチしており、
小説版に手を出していない人にもお勧めである。
僕が購入したのは文庫版で、全5冊。Amazonとかなら5巻セットでも売っているし、
たぶん1巻だけで終える人はいないので、まとめて入手する方が得と思う。

さて、内容である。
エベレストを初登頂したか否かが不明なまま遭難したマロリー。
物語は、そのマロリーが残したカメラをきっかけに、
日本登山界で異質な存在であった羽生という男を縦軸に、
自己を喪失しつつある山岳カメラマンの深町を横軸として、
エベレストを舞台に二人の人生がめぐりあい、そして山男として昇華する生き様を描く。

マロリーはエベレストに登頂したのか、という謎もさることながら、
羽生という男は何を求めているのか、
深町はどこへ行こうとしているのか、目が離せない物語が展開されている。

それにしても驚くのは、この羽生のような人間が実際に存在したことだ。
その人の名は森田勝。

森田氏の山男ぶりと、
この希有な冒険小説まで造りあげた夢枕獏のストーリーテラーぶりに、脱帽である。

興味がある方は、できれば5巻入手し、
冬の夜、静かに読破されたい。


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category: 冒険小説

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