ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

難問に挑み続ける、数多の数学者の人生。「100年の難問はなぜ解けたのか―天才数学者の光と影」  

100年の難問はなぜ解けたのか―天才数学者の光と影

春日 真人



数学においては、様々な未解決問題がある。
有名なものとしては「ミレニアム懸賞問題」があり、クレイ数学研究所が提示し、それぞれ懸賞金が懸けられている。
・P≠NP予想
・ホッジ予想
・ポアンカレ予想
・リーマン予想
・ヤン-ミルズ方程式と質量ギャップ問題
・ナビエ-ストークス方程式の解の存在と滑らかさ
・バーチ・スウィンナートン=ダイアー予想

また、以前紹介した「フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで」(レビューはこちら)も、フェルマーにより提示され、証明まで300年以上を要した難問だ。

正直なところ、それぞれの問題の意味を理解することすら僕には難しい(もっと正直に言えば、分からない)が、様々な数学的分野で発展を遂げている人類において、ぽっかりと未解決の穴があるというのは、やはり気になるものだ。
もちろん他の分野でも未解決の問題はあるが(ダークマターもそうだし、常温超電導もそうだろう)、そうした技術的な未解決と全く異なる不可思議さが、数学にはある。
それはおそらく、数学が純粋に人の思考に支えられた学問であるからだろう。
昨今は、もちろんテクニックとしてコンピューターが用いられるが、
それでも上記のような難問の「解法」をコンピュータにより見出せるというものではない。

人類はどこまで知識を拡大し得るのか。
その挑戦を、数百年前と変わらない道具で成し続けられるのが、数学の魅力と思っている。

さて、本書は上記に掲げたミレニアム懸賞問題のうち、唯一解かれた「ポアンカレ予想」に関するもの。

タイトルは「なぜ解けたのか」だが、数学的な解説書ではない。

このポアンカレ予想を解いた数学者、グレゴリー・ペレルマンは、しかし懸賞金を断り、
数学界におけるノーベル賞以上の価値があるフィールズ賞も辞退し、以降、学会・世間との繋がりを絶ってしまった。

そもそも、ポアンカレ予想とはどんな問題なのか。
歴代の数学者は、いかなる思考によりこの問題に挑み、倒れてきたのか。
グレゴリー・ペレルマンは、どのような思考と人生においてこの問題を解いたのか。
そして、なぜ世間との繋がりを絶ってしまったのか。

ポアンカレ予想という難問の解説というより、
本書は、こうした難問に挑む多くの数学者の人生を辿っていく。

実際のところ、「なぜ解けたのか」という問題もあるが、著者の眼は、「どのように挑み継がれたのか」という点にある。

それというのも、本書はNHKスペシャル「100年の難問はなぜ解けたのか」の取材を元にしており、著者はそのディレクターである。
それゆえに、「数学」よりも「数学者」に着目した作品と言えるだろう。

全く数学が苦手な者でも、本書を読み進めることは可能だし、
むしろ数学を避けている者にこそ、本書は読まれるべきだと考える。

そこには、普通では考えられない世界があり、生き様がある。

【目次】
プロローグ 世紀の難問と謎の数学者
第1章 ペレリマン博士を追って
第2章 「ポアンカレ予想」の誕生
第3章 古典数学vs.トポロジー
第4章 1950年代「白鯨」に食われた数学者たち
第5章 1960年代クラシックを捨てよ、ロックを聴こう
第6章 1980年代天才サーストンの光と影
第7章 1990年代開かれた解決への扉
エピローグ 終わりなき挑戦

レビューはこちら

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放浪の天才数学者エルデシュ (草思社文庫)  

放浪の天才数学者エルデシュ
ポール・ホフマン
【良かった度】★★☆☆

文庫 放浪の天才数学者エルデシュ (草思社文庫)文庫 放浪の天才数学者エルデシュ (草思社文庫)
(2011/10/04)
ポール・ホフマン

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 ポール・エルデシュ。数学を愛し、問題を解き、また仲間と解くために、スーツケースに荷物をつめ、世界各地を旅して生きた男。数学以外には身の回りのことは何もできなかった男。しかし多くの数学者は彼を愛し、彼と共に数学の世界を探検することを喜びとしていた。

 1913年3月26日-1996年9月20日。彼がつい20年前まで生きていたことに驚く。こうした人物が同時代にいることを知っていたら、どんなに勇気づけられていただろう。

 数学は不思議な学問だとつくづく思う。全てが頭の中の勝負である。観察や実験を伴わないため、いつ・どこででも可能である。しかしそれは裏返せば、いかなるときも数学から離れることはできないということだ。でも、生活には雑事がつきものだ。だから多くの数学者は、生活と数学の間でバランスをとっている。

 エルデシュは、最初からバランスをとることなど考えてもいなかった。

 しかし彼は、数学と素晴らしい人間性とのバランスはとっていた。
 多くの仲間にアイディアを与え、例え自分が結論をだしても、皆との共著として残している。共著がある人は、エルデシュナンバー1が与えられている。数学者の間では、本当に愛されていたんだなと思う。
また彼は、子どもを愛した。本書の巻頭にいくつかの写真があるが、子どもとの写真2葉だけ、エルデシュは笑っている。

 なお、もしかしたら、と思って探したら、YOUTUBEに映像も残っていた。
 例えばこれ。
  https://www.youtube.com/watch?v=my0L2icGooU
 ※YOUTUBEの日本語検索ではヒットしない。「Paul Erdős」とかで検索されたい。

 なお、ちょっと分厚く、淡々とした内容。読みきるのは体力が必要。
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category: 数学

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フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで  

フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで
サイモン・シン
【良かった度】★★★☆
10月16日開始、17日読了



フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまでフェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで
(2000/01)
サイモン シン

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 「3以上の自然数n について、x^n + y^n = z^n となる0でない自然数 (x, y, z)の組み合わせはない」

 という、17世紀の数学者ピエール・ド・フェルマーの記載。フェルマーはこれを証明したらしいのですが、詳細は残していませんでした。そして第三者がこれを証明することができないまま幾多の年月が過ぎ、なんと約360年後の1995年に、アンドリュー・ワイルズによってやっと証明されます。つい最近ですね。

 本書は、この最終定理に繋がる数学の歴史を縦軸に、そしてその時代時代にこの最終定理に関わった人物のドラマを横軸としながら、最終的にワイルズが証明するまでを描きます。

 何となく「谷山・志村予想」という日本人が絡んでいたのは記憶にありましたが、本書ではその二人の日本人も詳しく紹介されています。フェルマーの最終定理の証明過程において、同時に「谷山・志村予想」が証明されたことに重要な価値があった、というのは初めて理解できました。

 また、最終段階になってワイルズが足踏みする姿、そしてそこから最終解決に到達する姿は、非常に感動的でした。

 それにしても「博士と狂人」でもそうでしたが、本当にレベルの高い仕事をするためには、やはり完全に集中できる環境と、精神力が必要なようです。

 数学ものではありますが、ドキュメンタリーとして理解しやすく記述されています。やや密度の濃い読書、異質な世界を知る読書がしたい方には、オススメです。
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