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ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

先達は、あらまほしき事なり。「化石を掘る (ちくま新書)」  

化石を掘る (ちくま新書)
大八木和久




化石を掘る、というのはやはりロマンである。
香川県でも和泉層からアンモナイト等が見つかることがある。
20171029斜め.jpg

ただ、採石場や造成工事が真っ盛りだった頃には、
僕は化石には手を出していなかった。残念である。

その頃に日本を走り回っていたら、さぞ楽しかっただろう―という夢を実現しているのが、
著者、大八木氏だ。
その成果は、
日本全国化石採集の旅」(レビューはこちら)、
続・日本全国 化石採集の旅―まだまだ化石が僕を呼んでいる」、
日本全国化石採集の旅・完結編―いつまでも化石が僕を呼んでいる」(レビューはこちら)、
などに詳しく、さらに近年、なんと20年ぶりに「帰ってきた! 日本全国化石採集の旅―化石が僕をはなさない」も刊行されている。

その経験を凝縮し、入門編としてまとめていたのが本書である。
簡単なガイダンスの他、日本各地の採集地の紹介、
化石のクリーニング方法、標本の整理方法、標本写真の撮影方法など、
著者のノウハウが惜しげもなく語られている。

そもそも化石発掘~標本化という趣味は、一般的なものではない。
だからそのノウハウは、先人に学ぶか、自分で考えるしかない。

そうした意味で、著者独自のテクニックが含まれているだろうが、
多大な経験を持つ先人である著者の知見を知ることができるのは、
有り難い限りである。

特に日本各地の採集地情報は、著者が自ら足を運び、発掘しているだけに、
きわめて具体的である。
これだけでも、手元に置く価値はあるだろう。


【目次】
入門編(化石の世界、化石への招待状)
実践・野外編(化石採集の実際)
実践・室内編(クリーニングと整理)
活用編(化石展と化石博物館)




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category: 動物

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昭和天皇、かく語りき。「昭和天皇と戦後政治 陛下の御質問 (文春文庫)」  

昭和天皇と戦後政治 陛下の御質問 (文春文庫)
岩見 隆夫




今夏、NHKスペシャルで「昭和天皇は何を語ったのか~初公開・秘録「拝謁(はいえつ)記」~」という番組があった。

日本国憲法施行から日本の独立回復まで。
天皇の在り方と、明治維新以降の日本のかたちが変わるという、日本史上でも稀な激変期である。
この期間、5年半にわたり天皇に身近に接した宮内庁トップの田島道治氏による記録であり、
NHKスペシャルでは、何とか戦争への反省を国民に告げたいという昭和天皇の想いと、
象徴天皇としてそれが果たせなくなってく過程が描かれていた。

本書はその昭和天皇に対し、大臣らが「内奏」として昭和天皇に拝謁した際など、
実際に昭和天皇と言葉を交わした人々に取材した記録である。
まず本書、かなり客観的であり、著者自身のバイアスが少ないところ、信頼がおける。
その上で、そもそも昭和天皇との具体的な会話は公表されるものでもなく、
本書も様々な人々の回想を軸としているが、
それでも昭和天皇の人となりや想いを窺うことは、可能である。

前述の「拝謁記」の段階では、まだ政治的関与となりかねない発言(戦争責任の明確化など)も有り得たところ、
本書は「象徴天皇」として自己を封じ、万民に平等たらんとする昭和天皇の意思が随所にうかがえる。

既に平成から令和に変わり、昭和という時代は歴史となった。
昭和天皇の戦争への反省と、その上に築きあげた新しい時代の「天皇」の在り方は、
平成、令和と移り変わる中で、確実に定着した。
先頃の令和への代替わりを見れば、
多くの若い世代の「天皇」へのイメージは、かなり「親しみやすい」ものになっていると思う。

だがそこに至るには、「現人神」から「人間」へ、
「元首」から「象徴」へと、天皇の在り方が激変する中で、
深い反省(「拝謁記」による)と共に、新しい天皇たらんと努力された昭和天皇がいる。

令和となった時代、改めて本書を初めとして、
昭和天皇について振り返る機会があっても良いのではないだろうか。
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category: 歴史

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骨董を語る人々の、魅力。「東京美術骨董繁盛記 (中公新書)」  

東京美術骨董繁盛記 (中公新書)
奥本大三郎



僕は元来コレクター気質だし、
気に入ってしまうと、とことん突き詰めたいと思ってしまうので、
「骨董」には手を出すまいと決めている。
正直お金もないし、目も利かないし、勉強もできない。

だが、骨董という趣味を否定する気はなく、
古いものに価値を見いだし、それを愛で、次世代に繋ぐという趣味も良いと思う。

で、世に骨董そのものの本は多々あるが、なぜか目にする機会が少ないのが「骨董屋」に関する本である。
古いモノを扱うこと、店ごとに特徴があること、
主人の趣味・感性・目がモノを言うこと等々、「骨董屋」と「古本屋」は類似していると思うのだが、
「古本屋」に関する本は多く、この点の差異がよく分からない。

それはともかくとして、
本書は昆虫面でも有名な奥本大三郎氏が、東京の美術商・骨董店を巡り、
各店のなりたち、主人の来歴を語りあうものである。
多々具体的な骨董も出てくるが、それに関する記述はさほど多く無く、
骨董にある程度知識がある人ほど楽しめるだろう。

では僕のように骨董に縁が無ければ面白くないかというと、そうではない。
骨董という一大趣味のジャンルにおいて、確固たる地位を気づいた名店の数々。
その主人の苦労話や裏話である。おいそれと聞ける機会はない。
特に、骨董店が自身のことを語ることなど普通は無く、
その点、本書はなかなか珍しいスタンスの本である。

収録されているのは、18店。
週に1店、月に1店のペースでも良い、
日常と全く違う世界を味わうとができるだろう。
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category: 趣味

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カミキリムシの魅力には、抗えない。「へなちょこカミキリロード―初心者のためのカミキリムシ入門」  

へなちょこカミキリロード―初心者のためのカミキリムシ入門
市川和雄



へなちょこカミキリロード―初心者のためのカミキリムシ入門


子どもの頃から昆虫に興味があったものの、
その頃は採集方法も標本の作製方法も教わる術がなく、
昆虫は興味があるが手をだせないジャンルだった。

だが現在、インターネットの海には、有益な情報はいくらでもある。
ということで、数年前から昆虫採集を始めた。

ただ、昆虫の世界も、
そのターゲットはチョウ、トンボ、クワガタ等々、様々に細分化されている。
僕はとりあえず何でも採集する方針だったが、
自分が自然にどのターゲットに収束していくのかが、実は楽しみであった。

その結果、捕まえた時の喜びが最も大きく、
積極的に探したいと思ったのは、カミキリムシであった。

カミキリムシは、甲虫の仲間であるが、
その形態・色彩がバリエーションに富んでいる。
ゴミムシのように「黒一色」が基調ではない。
まずこの見た目の楽しさが、野鳥にも通じる。

また、日本で確認されているのは約800種(以上)。
野鳥が一昔前は555種、今の日本鳥類目録改訂第7版だと633種なので、
種数的にも近しい感じがあるのが、僕が惹かれる理由だろうか。

そして、このカミキリムシの魅力に憑りつかれ、
インターネット黎明期からブログ等で人気を博したのが「るどるふ」氏であり、
そのブログをベースに、
カミキリムシ専門図鑑よりも手軽に、
でも経験をベースに様々な知見を盛り込み、
それらを初心者に分かるように解説したのが、本書である。

こう書くと良いトコロばかりだが、実は実際にそのとおりである。
カミキリムシはムシの中でも人気のジャンルの一つであり、
そのため良い専門図鑑があるが、高い。
保育社の原色図鑑は、入手困難。
手軽に入手できる専門的一般書としては、
文一総合出版から刊行されている「新 カミキリムシハンドブック」くらいしかない。

だから、実際の採集に役立つ知見が満載の本書は人気が高く、
既に新刊は入手不可、
古本(Amazon)でも3000~5000円程度かな、という一冊である。

だから、入手できて本当に嬉しい。

内容も期待に違わず、著者の採集譚、経験、知見が盛り込まれており、
各種を採集するためのポイントや環境、時間など、
参考になる事項は多い。
特に、各カミキリムシとそのホスト植物をまとめた部分は、
カミキリムシに手を出そうとしている人間にとっては、極めて有用な情報だろう。
標本の作製方法なども掲載されており、まさにカミキリムシ版「昆虫採集入門」。

この一冊が有れば、カミキリムシに出会いたくなること間違いなしである。
いやあ、買って良かった。


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category: 昆虫

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分からないから、羨ましい。「鉱物コレクション ~コレクターが語る鉱物の魅力~: 収集ポイント&楽しみ方がわかる (サイエンス&コレクション)」  

鉱物コレクション ~コレクターが語る鉱物の魅力~: 収集ポイント&楽しみ方がわかる (サイエンス&コレクション)
青木正博




自然は深く、世界は広い。
だが、個人が自由に使える時間には限りがある。
だから自然観察系のジャンルには、できるだけ手を出していて、
とりあえず今は野鳥、昆虫、化石を楽しんでいる。

だが、長らく興味があるままで手が付けられないジャンルもある。
鉱物だ。
「石」というジャンルなら、河原や山で拾い集めることもできるが、
「一定の化学組成と結晶構造を有する」鉱物となると、
かなりハードルが高い。

それらを採集するための鉱脈・鉱山が近くに在るかという、物理的な制約ももちろんだが、
各鉱物に関する知識が、一筋縄でいかない。

野鳥-昆虫-植物だと相互に関連性があるが、
鉱物は全く異質である。

だからこそ、自分では手を出し難い鉱物にはロマンを感じるし、
それを極めた人々には崇敬の念すら抱く。

本書は、そうしたハイアマチュア11人を通して、
それぞれの採集歴、採集譚、自慢すべきコレクションの数々を紹介するもの。
おおむね、各人が自身の採集歴の中からのトピックをまず語り、
続いてコレクションの数々を、その背景と共に紹介する。
また、モノの羅列だけではなく、
コレクションの方法、各人の私設コレクションルームなど、
その極めっぶりは、羨ましくて仕方がない程だ。

水晶、オパール、柘榴石といった馴染みのあるモノから、
斜開銅石、球状黄鉄鉱、緑注石、水亜鉛銅鉱、
そらにトルトベイト石、ウチュクチャクア鉱、クリストバル石といった
名前からはさっぱり分からない鉱物まで。
何も分からないまま眺めるのだが、
それだけで実は、楽しい。

それは、この一冊に、
多くの鉱物ファンの楽しみと、努力が凝縮しているためだろう。
どんなジャンルにしても、「極めたヒトの話」というのは、
楽しいものである。

巻末には鉱物収集について、
標本の入手方法、撮影方法、保管方法等も掲載されている。

当然ながら、これだけで本書のような素晴らしいコレクションが成せる訳はないが、
鉱物に惹かれる人にとってはなかなか得難い情報だろう。
マニアックな本だが、
それを超えた喜びが詰まった一冊である。

【目次】
鉱物とは
(11人による紹介)
鉱物収集について
・標本の入手方法
・鉱物写真の撮影法
・標本の保存と保管
・標本の作り方
・鉱物を見ることができる博物館一覧表
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category: 地学

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