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ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

ヒトとしての暮らしが、甦る。「南の島のよくカニ食う旧石器人 (岩波科学ライブラリー)」  

南の島のよくカニ食う旧石器人 (岩波科学ライブラリー)
藤田 祐樹



旧石器時代。日本では今から約1万数千年~4万年前程度。
日常的に人間が意識しているのはたかだか2000年程度の歴史なので、
1万年前は遥かに遠く、
3万年以上続く長さは、想像し難い。

だが、その痕跡は確実に「どこか」に眠っている。
日本本土は主に酸性土壌のため旧石器人骨等が失われがちと言われ、
現時点では、日本旧石器時代の人骨は沖縄で多く発見されている。

その中でも、近年新たに発見され、
豊富な史料から当時の暮らしが視えつつあるのが、本書の舞台、
沖縄南部のサキタリ洞である。

本書は、沖縄で旧石器人遺跡(そして旧石器人骨)を探していた著者による、
サキタリ洞遺跡の発見、
そして発掘で視えてきた、旧石器人の「豊かな暮らし」を紹介するものだ。

この遺跡では、とにかく当初、モクズガニやカワニナばかりが発掘されたという。
その意味も分からず、淡々と発掘を続ける中、
ついに1つの骨片を発掘する。目当ての旧石器人だ。
そして更に発掘を続ける過程で、これまで出続けていたモクズガニとカワニナの意味が判明する。

すなわち、食料だ。
数万年にわたって、旧石器人が食べ続けていたカニの残骸。それが文字通り山となっていたのである。
そして、同時に発掘されていたカワニナ、これも食料だが、
その分析から食べていた季節まで推測できた。
それが「いつか」は、ぜひ本書を読んでいただきたい。

様々な発掘の苦労と楽しさ、
発見した遺物の分析、
そして見えてくる数万年前の世界。

上質な推理小説のように、
謎が解かれては新しい謎が生まれ、
ついに目の前に、旧石器人の豊かな暮らしが拡がっていく。
この「岩波科学ライブラリー」には良書が多いが、
本書もこれまで刊行されたものに負けず劣らず、
オリジナリティ溢れる、研究の醍醐味を伝えてくれる一冊である。

【目次】
1 むかしばなしの始まり―人類誕生、そしてヒトは沖縄へ
2 洞窟を掘る―沖縄に旧石器人を求めて
3 カニとウナギと釣り針と―旧石器人が残したもの
4 違いのわかる旧石器人―「旬」の食材を召し上がれ
5 消えたリュウキュウジカの謎
6 むかしばなしはまだ続く
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category: 歴史

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「ぷ~ん」という音に、眠れない。「あなたは嫌いかもしれないけど、とってもおもしろい蚊の話 日本の蚊34種類図鑑付き」  

あなたは嫌いかもしれないけど、とってもおもしろい蚊の話 日本の蚊34種類図鑑付き
三條場 千寿, 比嘉 由紀子, 沢辺 京子



山で野鳥の調査をしていると、悩まされるのが蚊である。
近年、虫よけ成分として イカリジンを15%と高濃度に配合した商品の販売が日本でも可能になり、
2019年はそちらにお世話になった。
ただ、それでも日本だと「鬱陶しい」「痒い」程度ですむが、
世界レベルだと蚊は、命の危険に係る感染症も媒介する。

ただ、それでも他人事と思っていたら、2019年の夏、
ガーナに留学した娘は予防薬の甲斐なく、マラリアに感染した。
幸い大したことは無かったが、蚊の恐ろしさを痛感した次第である。

本書はそんな蚊の魅力(どこ?)に憑りつかれた3人の女性研究者による
蚊の総論的ガイドブック。
なぜ刺すのか、どのような色や人を好むのかといったよく話題になるテーマから、
人や哺乳類以外の○○○○を刺す蚊、
蚊を食べる蚊など、興味深いテーマもある。

蚊の胃は二つあって、一つは花の蜜や樹液を消化する普通の胃、
そして吸血した血用の胃がある。
後者の胃で血を消化することによって、
初めて卵が作れるというのだ。
吸血→産卵という流れが、いかに蚊にとって重要なプロセスなのかが実感できる。

また中盤からは、日本の蚊34種類の図と解説。
各種につき見開き2p使っているのだから、その入れ込みようは半端ない。
ただ残念なことに、図がべたっとしたイラストで、
特徴を強調しているだけに、どうも生物感が無く、
ちょっと「図鑑」とは言い難い。
おそらくこんな本は2度と作られないので、
ぜひともここは実物写真で攻めていただきたかった。

なんとなれば、こんな妙な本を手にとるのは生物マニアであり、
そういう人間は、実物を見たいものである。

その点ちょっと残念だが、類書も少なく有益な一冊だ。

【目次】
1章教えて先生蚊の基本Q&A
2章蚊のおもしろい話
3章蚊のかたちを知る
4章愛と偏りの蚊図鑑
5章蚊と人類のまじめな話
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category: 昆虫

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日本が終わり、始まった一日を辿る。「日本のいちばん長い日 決定版 (文春文庫)」  

日本のいちばん長い日 決定版 (文春文庫)
半藤 一利



(玉音放送を間近に控え)

日本中に待つだけの時間が訪れた。 p332


平成が終わり、令和が始まった。
あらかじめ予告されていたこともあり、ほぼお祭り騒ぎ。
昭和終盤、天皇陛下のご体調が報道された日々と、
遂に昭和が終わるに至った日の「重さ」を思い起こすと、
感慨深いものがある。
だが、昭和が終わった後の自粛ムードを思い起こせば、
今回のようなスタイルの方が良いようにも、思う。

さて、改元は、もちろん「歴史的な一日」だ。
また各種災害、イベント等で「歴史的な一日」が有るが、
日本という国にとって、最も重大な一日と言えば、
本書が綴る昭和20年8月15日、
日本がポツダム宣言を受諾し、天皇陛下の玉音放送が流れるに至る一日だろう。

「日本」という国が継続している今でこそ、
その一日を触りかえることは、他の歴史の一ページを繰るの同等の想いでいられるが、
当時であれば、ポツダム宣言の受諾―敗戦以降、
「日本」という国がそのまま継続する保証すら、無かった。
まさに「国」としての一体感が喪失されかねない局面だったのである。

その日を迎えるにあたり、当時の閣僚、そして兵士は如何に考え、
行動したのか。
学校の教科書では殆ど触れられていた記憶がないが、
玉音放送を留め、徹底抗戦を貫こうとする一部兵士のクーデターなど、
様々な出来事が、この一日に凝縮されている。

本書は既に評価も高く、今更という感もあるだろうが、
いつまでも読みがれるべき一冊である。
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category: 戦争

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今度はまじめに書いてみた、けど?「菌は語る: ミクロの開拓者たちの生きざまと知性」  

菌は語る: ミクロの開拓者たちの生きざまと知性
星野 保



前著、「菌世界紀行――誰も知らないきのこを追って (岩波科学ライブラリー)」(レビューはこちら)のレビューには、こう書いた。


もう酔っぱらってばかりである。
よもやそこまでではあるまい、と読み進めたが、やっぱり酔っぱらいの珍道中であった。

もちろん「雪腐病菌」の生態や世界的分布を解明していく楽しさはあるが、
なんだかその記述は物足りなくて、生物としての「雪腐病菌」の面白さを知るには、
あと一歩欲しい感じ。

だがそれでも良いのである。



どうも多くの方が同様に感じたようで、
本書冒頭で、著者自身がこう記している。


特にガマノホタケ・雪腐病菌を巡る学術的な記述が少ないとの、もっともな意見はひどく堪えた(今見返すと多く見積もっても5分の1だった。)さらに追い打ちをかるように、菌のところを読み飛ばしても面白いとの感想もあり、いよいよ複雑な心境になった。(p5-6)



そこで、本書はそのリベンジである。
菌類とはなんぞや、から始まり、雪腐病菌の分類、性質、
寒冷地への適応などなど、
まさに「雪腐病菌」の研究者ならではの一冊となっている。

ただ、何だろう。
基本的な著者の軽やかな文筆は、同じである。
随所に記された脚注でも学儒論文の引用元を記していたりと、学究的な一冊だが、
どうしても前著同様の軽やかさが随所に光るのである。

むしろ、その随所を楽しむ余り、なぜか雪腐病菌(の話)が頭に入ってこない。
ちょっと僕自身が切羽詰まった時期に読んだためか、
はたまた著者の筆がなせる技かは知らないが、
本書の重要なテーマ、雪腐病菌とは何ぞや等々が、なぜか頭に残っていない。

各種の雪腐病菌の違い、歴史上の記録、気候変動による影響など、
雪腐病菌を中心に、おそらく相当広範な知見が記されているのだが、
僕にそれを紹介する資格はない。なにしろ、何も残っていないのである。


本ブログでは内容に具体的に触れないレビューが多いが、
それでも本書レビューはダントツだろう。

著者のせいだは(たぶん)ないが、とりあえず、
まずは「菌世界紀行――誰も知らないきのこを追って (岩波科学ライブラリー)」を読み、
そこから先に進みたい方が、本書を手にとっていただきたい。

【目次】
はじめに 雪の下の菌を追って
第1章 寒さと生きる菌類とはどんな生き物か
第2章 雪腐病菌Who are you?
第3章 雪腐病菌の極地
第4章 寒さ好きの菌類たちは、いかに雪腐病菌になったか
第5章 ご先祖様たちは、いつ“雪腐”を知ったのか
第6章 寿命のない菌類の世代交代
第7章 菌類に知性はあるのか?―仮説と妄想
おわりに

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category: 菌類

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フィールドワークの醍醐味を凝縮!「カラス屋、カラスを食べる 動物行動学者の愛と大ぼうけん」  

カラス屋、カラスを食べる 動物行動学者の愛と大ぼうけん (幻冬舎新書)
松原始



最近、生き物研究に注目が集まっている。
そのおかけで、興味深い研究者の方々が、興味深い本を多刊行されている。素晴らしい話である。
本書も、カラス研究者として、カラス本・野鳥観察本を数冊刊行されている著者によるもの。
(「カラスの教科書 (講談社文庫)」(レビューはこちら)や、
カラス屋の双眼鏡 (ハルキ文庫)」(レビューはこちら)がある。)

ただ、「カラス」をタイトルに前面に出しているものの、
実はカラスの話題は半分もない。
むしろ本書は、著者がカラス研究者になるまでに、
バイトや協力のために携わった様々なフィールドワークの記録である。

そのため、海岸のウミガメ、屋久島のサル、冠島のオオミズナギドリなど、
カラス研究とは全く異なるフィールドで、
それぞれの生物にあった、独特な研究風景が綴られている。
これが面白いのである。

鳥が降ってくる冠島のオオミズナギドリ。鳥類標識調査では有名なところだが、
その調査風景を第三者が記すのは、なかなか無いだろう。

また、屋久島におけるサル調査では、原生林の中をフィールドにする困難さに対して、
若さと体力でカバーしてしまう姿が描かれている。
各章はそんなに長くなく、
それぞれ単独で、短い時間で楽しめる。
しかもこれ一冊で、日本各地で行われている、変わった(しかし真面目な)調査を追体験できるのだから、
読まずにいられようかという感じ。
生き物好き・フィールドワークや身近な冒険好きで、読むものがない、という方には、
真っ先にお薦めする。

【目次】
カラスは女子供をバカにするか
天国に一番近い地獄
味覚生物学のススメ
ウミガメと握手
新宿クロウズ
ナイトミュージアム
謎の生物「ヨソモノ」
ケダモノ5班の彷徨
実録!木津川24時
青くはなかったが美しきドナウ
調査職人



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category: 動物

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