ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

東京大学史料編纂所教授による、史料採訪の旅とは? 「日本史の一級史料 (光文社新書)」  

日本史の一級史料 (光文社新書)
山本 博文



僕らが知っている「歴史」とは、唯一無二ではない。

歴史は過去に確かにあったことですが、現在、われわれが知りうる「歴史」というのは、史料から復元されたものであり、かつ史料からしか復元されえないもの


史料が残っていたとしても、それを読む歴史家によって、そこから描き出される歴史の姿は変わります。


つまり、歴史を語るとき、史料とそれを読む歴史家の存在を無視することはできないのです。




だが、多くの人々は、知らず知らずのうちに、学校で学んだ歴史知識、歴史観に拘束されている。

また、社会人になって以降、ある立場から「解釈した歴史」に接し、
「これこそが正しい歴史」と思い込んでしまうこともある。

本当は学校において、
「今学んでいる歴史は、現在確認されている史料と、
多くの歴史家またはその分野の専門的な歴史家が認識している歴史である。
だから、卒業後も常に自身で学ぶ必要がある」と、繰り返し教えておく必要があるだろう。

さて、その史料については、
その歴史的事実が発生した時そのものに記録された一次史料と、後日に記録された二次史料がある。

そうした時点性はあるものの、二次史料のうちにも、歴史を知るうえで重要な史料は存在する。

一般化された言葉ではないが、そうした重要な史料、貴重な史料を指して、「一級史料」という場合がある(多くは、マスコミなどにおいて)。

本書は、東京大学史料編纂所の教授として、全国各地の様々な史料に接してきた著者によるもの。

タイトルから、様々な「一級史料」が羅列・紹介されるものかと思われるが、
実はいくつかの一級史料を基にはするものの、実際は

・東京大学史料編纂所による全国の「史料採訪」(史料発掘・記録)活動の実際、
・新たな史料の発見例
・一級史料「島津家文書」の研究例

などを紹介するもの。

歴史の基礎である史料をいかに見つけ、記録するか。
そして実際に、史料からどのような歴史が復元できたかを、
東京大学史料編纂所の教授が自身の経験から示す、なかなか類を見ない本である。

そもそも、東京大学史料編纂所(公式HPはこちら)の前身は、1793年(寛政5年)、塙保己一の建議によって幕府が開設した和学講談所。

明治維新後、史料編輯国史校正局となり、日本の歴史を記録する事業を担う。
そして、帝国大学(現・東京大学)に修史事業が移管(1888年(明治21年)) された後、
外国人教師ルードウィヒ・リースの意見により、歴史を書くのではなく、
収集した史料を編纂・刊行することを任務とするようになった。

日本における史料収集・編纂の要となる組織である。

実は、本書で僕も初めて知ったのだが、
デジタル化された様々な古文書を横断検索できるデータベースや、
くずし字の電子字書などもある。
様々なデータベースの一覧はこちら
興味がある人にとっては、極めて有用なシステムだろう。

史料編纂という活動は地味だが、これなくして日本の歴史を辿ることは不可能である。
本書を通じ、もっと多くの方に存在と重要性を認識していただきたい。

【目次】
第1章 有名時代劇のもと史料
第2章 歴史家は何をどう読む?
第3章 新しい史料を発掘する
第4章 一級史料の宝庫「島津家文書」を読む
第5章 「歴史学」への招待
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category: 歴史

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「パンダ」ゾウムシ、イノシシ、コガネムシの幼虫  

〈2017/04/17月-4/22土〉

息を止めて潜水するかのように一週間経過。
読書もあまり捗らず。
佐々淳行氏の「私を通りすぎたスパイたち」、
大関 真之氏の「先生、それって「量子」の仕業ですか?」をかろうじて読了。
私を通りすぎたスパイたち」、スパイ天国と呼ばれる日本において、
それでもスパイと闘おうとした組織の物語。
平和なのは良いことだが、こうした立場の人々の苦労が明らかにされないことで、
そもそも「無かったこと」になるのは、やはりどうか。
現実の危機を知らなければ、やはり正しい判断はできない。
「平和な日本では、諸外国のスパイ活動なんて存在しない」と思っている層は、ぜひ読んでいただきたい。

先生、それって「量子」の仕業ですか?」は、量子論を例え話で優しく噛み砕いて説明するもの。
極めて小さな世界である量子論が宇宙論と連結するあたり、ワクワクさせられる。
ただ、ちょっと細かい話にまで例えが過ぎたかな、とも思う。
一般的な感覚では理解しがたい量子の世界を、一般的な言葉で説明する方のは、やはり難しい。

週末。わずかな休みを有効活用すべく、午前中に会誌作成、そして書評2本書く。
完了後、思い立って自宅近くの山で鳥類標識調査を実施。
新しい調査地は期待ができそうだったかせ、時刻は昼、野鳥の動きもとまり、1羽も放鳥できず。
まあそんな日もある。
状況は分かったし、おそらく早朝や冬季は結果が出そうな気がする。ポジティブ・シンキング。

待機時間中に周辺を探索(何かあるといけないので、調査地入口から30m付近のみ)。
「パンダ」と名高いオジロアシナガゾウムシを確認。
昆虫採集を始めないと、たぶん一生認識しなかった可愛いゾウムシ。春が来たなと実感。
2017IMG_1311.jpg

また、近くの池際ではイノシシの足跡。
今日は調査地のすぐ上で有害鳥獣駆除(イノシシ)も実施していたし、やはり多い感じ。
別の調査地でもイノシシがフゴフゴ言っていたし、たぶんいつか遭遇するだろう。
2017IMG_1313.jpg

帰宅後、庭の草抜き。あわせて、抜いた草を積んでおいた堆肥箱から、
土に還った部分を畑に戻す作業。
上層の草混じりの部分を除き、下層の土を取り出す。
箱型の堆肥箱の前面を外すので楽な筈だが、やはり重労働。
息子が手伝ってくれて、なんとか完了。

堆肥箱からは数えきれないコガネムシの幼虫が出てきたが、
全て新しく抜いた草と共に、堆肥箱へ戻す。土が少ないから羽化は難しいだろうなあ。。

以上、体力を削って休みを満喫する。
明日は野鳥観察会。果たして朝起きられるのか。




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category: 雑記:日々のこと

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囮捜査官は、見た!! 「ムンクを追え! 『叫び』奪還に賭けたロンドン警視庁美術特捜班の100日」  

ムンクを追え! 『叫び』奪還に賭けたロンドン警視庁美術特捜班の100日
エドワード・ドルニック



個人的に、日本と西洋の大きな差の一つに、社会における美術作品に対する認識があると感じている。
何となくだが、
日本だと、美術作品は生活とは離れたところに存在しているのではないか。
一般人が美術作品のレプリカを気軽に購入したり、飾ったりすることはない。
また同時に、相当な金満家であっても、趣味としても投資としても、あまり美術作品を売買する文化はないのではないか。
特に、西洋絵画にしても日本画にしても、「絵画」というモノは、どうも生活に定着していないと感じる。
(ただ、これが「骨董品」となると、話は別で、一般人でも興味津々というのが、面白いところだ。)

一方西洋では、美術作品、とくに「絵画」は、良くも悪くも生活に密着している感がある。
この、「良くも」というのは、芸術としての評価。
そして「悪くも」というのは、金銭的価値としての評価である。

「美術絵画は金になる」という認識は、おそらく日本では余り発想されないが、
それは、「美術絵画」を「買う」という行為が、日本では極めて限られた層でしか成立しないためだろう。

西洋―特にヨーロッパでは、「美術絵画」は完全に金との交換が可能な資産として定着している。

以前紹介したが、「「失われた名画」の展覧会」(レビューはこちら)や、「ナチスの財宝 (講談社現代新書)」(レビューはこちら)でも、美術を盗むという行為が、いかに一般化されているかが伺える。

そして、盗む者がいれば、取り返す者もいる。

本書は、1994年2月14日にオスロ国立美術館所蔵から盗まれた油彩画のムンクの「叫び」を、ロンドン警視庁美術特捜班の囮捜査官が取り返すまでを克明に記録した一冊。

なぜロンドン警視庁美術特捜班が出動したのかから始め、
囮捜査官のカモフラージュ、
犯人との取引における駆け引き等、通常知ることができない奪還劇の一部始終を楽しむことができる。

またこの本筋だけでなく、様々な美術品の盗難と奪還エピソードも散りばめられている。
そこに在るのは、「犯人逮捕」ではなく、「奪還」こそが至上命題であるというスタイル。

いかに犯人から取り返すか。そこに囮捜査官の知略が尽くされる。

ただ本書、「ロンドン警視庁美術特捜班の」と銘打ってはいるものの、
実際にはその中のエース囮捜査官にして、
ムンク奪還計画の中心となったチャーリー・ヒルの物語である。

そのため、ロンドン警視庁美術特捜班の多面的な活躍を知るには、物足りない内容となっている。
そこを期待すると裏切られることになるが、
チャーリー・ヒル自身、既に囮捜査官を辞め、民間における盗難美術の回収人になっており、
それ故に、本来はヴェールに包まれているはずの囮捜査が、これほど明らかにできたのだろう。

囮捜査において、どのように身分を偽り、ストーリーを構築するか。
実際の取引現場での、臨機応変な対応ぶり。

そして、盗難した犯人の思惑。

様々な駆け引きの交錯を、リアルに楽しめる一冊。
やや饒舌な語り口なので、血沸き肉躍る読書とはいかないが、じっくり読み、楽しむには良い一冊である。

【目次】
第1部 二人の男と一本のハシゴ
第2部 フェルメールとギャング
第3部 ゲティから来た男
第4部 囮捜査の技術
第5部 地下室にて
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category: ノンフィクション

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

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現代社会に必須となった、新たなビジネス。「民間軍事会社の内幕」  

民間軍事会社の内幕 (ちくま文庫 す 19-1)
菅原 出



本書は、2007年に刊行された「外注される戦争」の加筆修正版として、2010年に刊行された。
それからも、既に6年以上が経過している。
恐らく既に状況は大きく変化しているだろうが、日本では全く馴染みのな無い民間軍事会社(PMC、private military company)がなぜ生まれ、いかに拡大しているかを知っておくことは、極めて重要だ。

誤解されがちだか、そもそもPMCは傭兵斡旋会社ではない。

戦闘という作戦は、もちろん正規軍が行う。
問題は、軍が戦闘行為を行うまでには、単純に舞台の移動、既知の設営が必要だ。
そして人がいるところ、これも単純に食料や廃棄物の処理、装備や資材の運搬も必要である。

食事一つとっても、食材、料理人が必要だ。食材もどこかから仕入れ、運搬する必要がある。
だがその運搬ルートは、最前線までの道である。どこに敵が潜んでいるかは、分からない。

また、最前線は正規の軍が対応するとして、
確保した後方の街では、誰が文官や事務担当者を守るのか。
場所は、戦時下の国。ガードマンでは役不足だ。

様々な圧力によって、軍の予算・人員は縮減されている。
かつては全て軍が対応できていたが、こうした後方支援に該当する部分にまで兵は避けない。
では、アウトソーシングではないか、という発想がある。

一方で、年齢や体力的な理由により軍を退職した者たちには、平和な社会では全く役立たないが、戦地では有用な知識と経験がある。

その能力を活かし、通常の会社とは異なる危機管理能力を備えて、戦時下の後方支援等を請け負う会社。それがPMCである。

本書は、そのPMCの成り立ち、イラク戦争における活動、
また優れたPMCだけでなく、杜撰なPMCによる弊害など、日本では殆ど報道されない事情を詳しく紹介してくれる。

例えば、民間会社であるということは、ニーズに敏感であり、かつ政治的な制約がないということだ。

そのため、人質解放交渉、紛争地で活動する企業の警備(保険とセットだ)、
様々な国の軍隊のスキルアップ訓練、紛争地で取材するメディア向けの危機対応訓練など、軍事会社という言葉から抱くイメージとは全く異なる活動をしている。

本書でもそれらの活動が紹介され、実際に著者がメディア向けの訓練を受けているが、その内容は非常にリアルな現実を見据えたもの。著者も語っているが、日本のメディアがこうした訓練を受けていれば、紛争地での取材はもっと価値あるものになるだろう。

「民間で軍事に関係するノウハウを提供する会社」というだけで、日本では毛嫌いされる可能性が高いが、
既に敵の攻撃を抑止・対処することだけが安全保障ではない。

テロリストの資金追跡、国境付近の人の通行管理、警察や裁判官の再育成、民主的な選挙の支援、
活動する企業等の警備、基地や難民キャンプへの物資輸送。

テロ・内戦・軍事干渉など、世界各地で問題が日々発生しているが、そうした荒れた地域を立て直すという「人道的な行為」は、もはや軍だけでは成立しない。国連からNGOまで様々な立場が関わる必要があるが、PMCもその一人なのである。

そう考えると、世界的にも稀な程に安全である日本において、PMCが正しく認識されていないことは、大きな問題だろう。

何も、軍の活動を想定せよと言っているのではない。
ODAによる紛争地への企業派遣。
紛争地でのNGOの活動。
災害によりライフラインが経たれた地での救援。
世界の報道すべき問題のある地域での取材活動。

実際のところ、そうした活動にこそ、PMCを上手く利用する必要があるし、PMCのノウハウを学び、日本的にPMCが生まれないかを検討する余地もある筈だ。

特に、各国で軍に対する人や予算は削減され続けている。そうすると、紛争地で真っ当に活動したいのなら、良いPMCを確保することが重要となる。

だが、日本、また日本のNGOにそのような対応が可能だろうか。
基地や活動拠点の設営・運営、資材の運搬などを一から十まで自衛隊やNGOが実施し、期待される役割も、本来発揮すべき能力も果たせないまま終わるのではないだろうか。

戦争反対というのは、素直に正しいと思う。
だが、そうした求めるべき未来と、今そこにある問題への対処は別だ。
PMCのような会社が成立し得る現実を直視しなければ、今後の安全保障は成立しないだろう。

【目次】
第1章 襲撃された日本人
第2章 戦場の仕事人たち
第3章 イラク戦争を支えたシステム
第4章 働く側の本音
第5章 暗躍する企業戦士たち
第6章 テロと戦う影の同盟者
第7章 対テロ・セキュリティ訓練
第8章 ブラックウォーター・スキャンダル
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category: 戦争

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

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動植物の代弁者、野鳥のさえずり  

〈2017/04/10月-4/15土〉

慌ただしく一週間終了。咳が抜けず。
なんだか頭がまとまらず、読み終えたのは「プランツ・ウォーク 東京道草ガイド」のみ。
本書は、柳生真吾氏といとうせいこう氏が、東京の植物を巡る旅。
有名な巨樹や歴史的な植生を見て回るのではなく、街角の植物を見て歩きながら、
その土地の風土や佇まいを理解するもの。視線が独特で楽しい。
それにしても、
魚類は枡 太一アナやさかなクンさん、昆虫は養老氏など、
様々な動植物ジャンルにそれぞれ良き代弁者がいることが、一般層への普及に繋がっていると思うが、
そう考えるとつくづく、植物の柳生真吾氏の早世は悔やまれる。

ところで本日土曜日AMは、久しぶりにフィールド(山)へ。
風が強いのが残念だったが、
イカル、アオゲラ、ウグイス、ソウシチョウ、ヤブサメ、センダイムシクイ、全部囀っていて楽しい。
(ソウシチョウが囀っているのはいただけないが。)

ところで、今後NHKで楽しそうな番組があるので、ご紹介。
これがニッポンの恐竜王国だ (仮)
2017年5月7日(日)、午後9時00分~9時49分。

“水の宇宙”を潜る~絶景 オルダ水中洞窟~ (仮)
2017年5月13日(土)、午後9時00分~9時49分

さて、ツグミは香川では五月の連休明けにはいなくなるが、
自宅近くでは、もう姿を見なくなった。
皆さんのお近くでは、まだいるでしょうか。


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category: 雑記:日々のこと

thread: 日々のつれづれ - janre: 日記

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